君の温もりを知る

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「……はい、今日はここまで」


わざとそこで話を終えると、
真白はきょとんとして俺を見た。


「え、中途半端。そこらの連続ドラマより
続きが気になる切り方ですよ、それ」

「放送作家向きだろ?俺」

「それは否定はしないけど!
日馬くんはどうなるの!日馬くんは!」

「…さあ、な。はいはい、お嬢ちゃんは
帰る時間ですよ。俺はこの通り家まで
送ることもできませんからね」

「もう9時回ってるから
もう既に危険なのは変わりないですけど」

「…なんなら泊まるか?」

「さあて、帰りますか」

「んだよ、そんなに嫌かよ」

「…だってその方が危険だし」

「俺は当然貧乳には興味ねえけど?
世間にはそれがいいって奴もいるんだぜ。
理解に苦しむね、ほんと」


あっという間に荷物を片付けた真白は、
早々と病室からでようと立ち上がった。


「じゃ、また明日」

「あれ?部活ねえの?」

「珍しく日曜日フルでお休みなの」

「へえ…だからってお迎えに
来てくれるんだ。
なかなか可愛いとこあんじゃねえか」

「…帰ります」

「そんな照れなくても…」

「照れてないから!」

「はいはい、じゃあ気をつけて」


すぐに真白は部屋を後にした。

俺の話を聞いていたあいつの顔は、
とてもとても悲しそうなら顔だった。

別に変わった話でも、なかったろうに。

(あいかわずのお人好しだな……)

俺は思わずクスッと笑みをこぼし、
少し背筋を伸ばして窓の外を臨む。

ちょうど入り口から出た真白の背中を
見送り、瞬間俺は手元に落ちた水滴に
意識をやる。

一体なんだろうと周りを見渡せば、
鏡に映った自分と目があった。

その俺の目からは涙が一筋、零れていた。

(あれ、やべえ俺……)

ーーー泣いてる。



[第四章]

(ねえねえ、昨日入った五号室の子)
(知ってるわよ。あのすごく可愛い子)
(一日だけなんてさびしいわ…)
(あ、おはようございます)
(あら、真白ちゃんおはよう)
(…今真白ちゃんが入ってったのって)
(知らなかった?彼、真白ちゃんの彼氏)
(か、彼氏って…確かめたの?!)
(それはしてないけど、あれは確かよ)
(…真白ちゃんからしょうがないわね)
(そうねえ、もともと美少女だし)
((あの真白ちゃんが、ねえ…))
(私達も年をとるわけだわ)
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