君の温もりを知る
俺はピアノが嫌いだ。
俺から全てを奪っていったから。
俺から『愛』を、奪っていったから。
けれどその時確かに、
ピアノも捨てたもんじゃない
そう思えたのは。
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「どうしたの?」
聞こえてきた声にゆっくり顔を上げると
レッスンを終えたらしくドアから
顔を覗かせる吉原真白と目が合った。
先生はまだ中で片付けをしてるようだ。
「なんだよ、」
俺がそう不機嫌に返したのも
気にしない様子で、
「なにかあったの?」
俺を、優しく抱きしめた。
「こうしてね、沙月ちゃんが
いつも言ってくれるの」
まるで赤ちゃんにするみたいに
背中をポンポンとリズム良く叩く。
「どんな真白も私が受け入れるよって」
だから、と吉原真白は言葉をためた。
「どんな太一さんも真白が受け入れるよ」
だって、真白はもう太一さんの
お友達なんだから。
ーーーやばいやばい、これはやばい。
俺は思わず、吉原真白を振り払い、
出口目掛けて、一目散に走った。
その日俺は悟った。
吉原真白は、俺にとって毒だ、と。