君の温もりを知る

あんな失礼なことをしたにも関わらず、
あの日以来、吉原真白は俺に
ことあるごとに絡んでくるようになった。


「ね、ね、真白とおままごとしよう?」


とか


「新しいオモチャ屋さんに行こうよ!」


とか。

お前は本当に人見知りなのか?
そう疑いたくなる程だった。

そして今日も、


「ああ、もういい加減にしろよ!」


否、今日は一層しつこかった。
俺の帰り道にまで、着いて来やがる。

田中さんに相談しても、
いつもいつも帰ってくるのは
同じ言葉だけだった。

『きっと始めての友達が嬉しいんです』

その意味が、わからなかった。

俺が見る限り、ピアノ教室の他の
女子やもともと人数の割合の少ない
男子とだって普通に話してるようだし、
どこの誰から見てもあれは『友達』だ。

それをどうして、俺だけが『友達』で
あるかのように言うのか、
俺にはまだわからなかった。

田中さんの言う、『友達』の意味を。


「もうすぐ、俺の家につく。
いい加減、もう帰れよ」


「やだよ」


「我儘も大概にしてくれよ。
付き合ってやるほど、俺は優しくない」


そう、俺は、優しくない。


「優しいよ」


ひたすらに真っ直ぐ、吉原真白が言う。


「は?お前が何をーー」


「沙月ちゃんが言ってたもん」


「ーー沙月ちゃん沙月ちゃんって、
田中さんはお前のなんなんだよ?!」


俺は思わず、声を張り上げた。


「家族だよ」


「……は、」


「その沙月ちゃんが、言ってたもん。
寂しさを知ってる人は、
他の人に優しくなれるんだって」


「なに言ってーー」


「真白にはね、」


太一さんが、すっごく寂しそうに見える。

俺はその時、始めてしっかりと、
吉原真白と目を合わせた。
< 60 / 61 >

この作品をシェア

pagetop