君の温もりを知る
なんだか急に馬鹿らしくなったんだ。
何をって、ほら、全てをってやつ。
こんないち住宅街で、俺は一体
何をやってんだって、冷静になった。
そして再確認。
吉原真白は、やっぱり毒でしかない。
「ーー教えてくれよ」
俺の意思とは反して、口が勝手に動く。
「へ?」
いきなりの俺の反応に、吉原真白も
驚いたようだ。俺だって、驚きだ。
「ピアノ、教えてくれよ」
俺、お前は好きじゃないけど、
お前のピアノは好きなんだ。
わかっていているのに、俺はどうしても
この毒から逃げる術はないらしい。
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「ただいま、」
「おじゃまします!」
今日は家に田中さんが来ない日。
ということは、家にはどうせ誰も
いやしないってことだから。
ちょっとくらい、吉原真白を
家に上げたっていいんじゃないか。
そしたら、きっとこいつは
いい加減満足するんじゃないか。
俺はそう勝手に理由づけて、
吉原真白を家に入れた。
「わああ!広いんだね!
沙月ちゃんが言ってた通りだ」
まあ、吉原真白の言う感想は
珍しいものじゃない。この家に入る人は
誰だってそういう反応だから。
「二階に上がってすぐの、一番デカイ
扉の部屋に入っててくれ。
俺は飲み物、持ってくから」
「うん、わかった」
我ながら、幼稚園児にしては
十分過ぎる来客対応だな、と感心しつつ
素直に階段を上る吉原真白を見送り、
ここも無駄に広いキッチンへと入った。
