【完】恋のキューピットは山田君!
カサ、と音がして、手元をみると、先輩
に渡せなかったチョコレートケーキの箱
が入った袋があった。
「無駄になっちゃったなぁ……」
せっかく作ったのに。
初めてのバレンタインだったのに……。
箱を取り出して開けてみると、結構綺麗
に仕上がったチョコレートケーキが顔を
覗かせる。
作ってるときはすごく楽しくて、幸せだ
った。
だから流石に、捨てるのはもったいなく
てできない。
「……自分で食べちゃお」
自分で作ったチョコレートケーキを自分
で食べるなんて、ちょっと悲しいけど、
なんて思いながら、ケーキを口に運ぼう
としたとき──。
「何自分で食おうとしてんだよ」
ここにいるはずのない声が聞こえてきて
、私は固まった。