My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ
少し離れた場所にある、その美しい建物を見つめていると、一瞬どこからともなく強い風が吹いた
辺りの花を巻き上げて目の前に花が舞ったのを見て、反射的に腕で目元を覆った
すると、春の訪れを感じさせる温かい風が
頬を優しく撫でていった
「風までも柔らかいんだな。この国は」
懐かしい肌触りを感じて、思わず小さく呟いた
そして、覆っていた腕を下げた時
――俺は、息をするのも忘れた
目の前の建物の中に立つ
1人の女性
真っ白な柱に手をついて
俯いている