My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ
美しい髪が、その小さな背を覆う
不意に空を見上げたその横顔が、月明かりに照らされて美しく輝く
まるで女神の様に神々しい姿に、胸が高鳴る
その姿を、じっと見つめていると
「ソフィア」
不意に彼女が声を落として、現実に引き戻される
すると、顔だけゆっくりとこちらに向けて
そして、もう一度言葉を落とした
「私の名だ」
囁く様にそう言った彼女
「ア...アレンだ」
「アレン」
一瞬戸惑った俺の名をなぞる彼女
その声で名前を呼ばれただけで、胸が苦しくなる
もう一度呼んでほしいと、思ってしまう
「では――アレン。また明日この時間に。この場所で」
立ち尽くす俺に、そう言い残して歩き出した彼女
そして、ゆっくりと俺の隣を抜けて
あの細い階段から姿を消した
見上げた空は、眩しい程の
三日月だった