ブラッドサースティ・キラー
「なんで……どうして?どうして僕を助けた?どうして僕を殺さない?」

「教える義理はないな。くだらない質問をしていると――殺すぞ?」


 やけに冷たい声だった。

 身体が強張り、汗が滲むのが分かった。

 でも、僕は勇気を振り絞って言う。


「殺せよ」


 殺人鬼は黙った。

 静寂が僕を襲う。

 バクバクと激しく動く心臓が、すぐ耳元で聴こえる。

 反射的に目をつむった。

 そして、やがて――殺人鬼は笑った。


「おもしろいな、お前。自ら殺しを請う人物は初めてだ。――ますます生かしたくなった」

「えっ……」

「お前は殺さない」


 ふわりと、生暖かい風が背後でした。

 刹那、殺人鬼は背後から僕の耳元で囁いた。


「“殺せない”んだよ」


 その声を最後に、僕は気を失った。
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