ブラッドサースティ・キラー
 家族はもういない。

 殺人鬼の手によって殺された。

 だからもう、家族はかえってこない。

 それは分かっている。分かっている、つもりなんだ。

 頭で理解しても、心がその現実を受け止めてはくれないんだ。

 だから理解するまで、心の整理がつくまで、僕は泣いたんだ。

 泣いたって、いいよね?


「泣くことは悪いことじゃねぇよ」


 大地は言う。

 僕はその言葉に元気付けられ、また泣いた。

 しばらくしたら泣き疲れて眠っていたようで……気が付いたらベッドの上で横になって、朝を迎えていた。


「……大地の家で、眠っていたんだ……」


 あっ。そうだ。


「大地のおばさんやおじさんに挨拶しないと……」


 僕がおばさんたちと親しい仲や、仕方のない成り行きだったとはいえ、泊めてもらったのだから、お礼はしなくちゃ。
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