花嫁指南学校
 人目もはばからずに恵梨沙の学校をこき下ろす女性客に、さすがの来宮も腹が立った。

「お姉さん。ちょっと静かにしてもらえませんか。僕の連れはまさにあなたの話しているカメリア女学園の学生なんですよ。あそこの悪口は差し控えていただきたい」

 来宮の言葉を聞いた志穂美は、ニヤニヤしながら隣に座っている男女の二人連れを見る。

「ふーん。あんたもあそこの学生なのね。ふーん、ふーん、良かったわね。お金持ちの彼氏が見つかってさぁ。それにロリコン女学園の顧客のわりには若いじゃん、この人」

 来宮に注意されても、泥酔した志穂美は悪態をつき続ける。

「失礼なことを言うのはやめてください!」
 今度は恵梨沙も黙ってはいなかった。

「あなたの言っていることは偏見にまみれています。カメリアはお金も学歴も無い貧しい女性たちに、堅実な結婚相手を紹介してくれる学校なんです。私たちはあなたのように恵まれた家庭に生まれたわけじゃないんです。だから、私たちが成功するためにはやり方を工夫しないといけないんです。私はあなたとは違うんです!」

「まるで、大昔に政治家が吐いたようなセリフねぇ」

「だってそうでしょ。見たところあなたは高そうな洋服を着ているし、そのブランドバッグからはみ出しているのは社員のネームタグですよね? あなたは一流広告代理店の社員なんですね。そういう企業に入るには有名な四年制大学を出ていないといけないし、場合によっては親のコネだって必要かもしれません。言わせてもらいますけど、一流企業に勤めていて高級ブランドを身に着けているあなたの方が、私たちカメリアの学生よりもずっと恵まれていますよ」

< 45 / 145 >

この作品をシェア

pagetop