花嫁指南学校
「あなたのように若い人が夢や希望を抱くのは素晴らしいことです。たとえそれが本学の趣旨とは異なる希望であっても、私たち教員は学生の夢を叶えたいと思うものです。ですが、残念ながらあなたには医療専門学校で学ぶ経済的な余裕はありません。おそらくあなたのお祖母様もあなたを専門学校に送る経済力はないでしょう。そこのところをあなたはどのように考えているのですか。あなたのことだから何の計画も無しに、医療専門学校へ進学したいと思っているわけではないでしょう」

「はい。経済的な点ついては郷里の奨学金を頼ろうと考えております。九州にある私の出身地には過疎化の町村が複数点在していて、慢性的な医療従事者の不足に悩んでおります。地元の財界人によって組織されたカンガルーズクラブという団体は、毎年医療専門学校を志望する若干名の学生に全面的な資金援助を行っています。奨学生に選ばれた学生は六年分の学費と生活費を全額給付してもらえるのです。ただし、専門学校を卒業して国家試験に合格したあかつきには、県内の無医村を中心とした医療過疎地の地域に赴任することが条件です。私はこの奨学金に挑戦してみようと考えております」

< 49 / 145 >

この作品をシェア

pagetop