花嫁指南学校
 来宮はその目を大きく見開いた。

「ええ。来宮さんのおっしゃりたいことはよくわかります。医療系の専門学校に入るとなると私には色々と不利な条件があります。大それた望みだということは私自身にもよくわかっています。ですけども、郷里にある篤志家のグループが支給する奨学金を利用して医療の勉強ができないかと考えているわけです。私は地方にある国公立の医療専門学校に入学したいと思っていますから、あなたとは離れ離れになってしまいます。国家試験に合格しても、奨学制度の決まりで郷里の過疎地に赴任しなければなりませんから、もうここには戻ってこられないのですよ」

 恵梨沙には来宮の顔をまっすぐ見ることができなかった。油断すると目尻からしょっぱい液体がこぼれ落ちてしまいそうだった。

「来宮さん。私がカメリアに来たのは、小学六年生の時に母を病気で亡くしたからなんですよ。うちは母子家庭でしたから、母以外に私を養育できる家族はいませんでした。私の将来を案じた祖母によって私はあの学園に送られたのです。母が亡くなった時、ちょうどお友だちを亡くした時のあなたのように、私は自分の無力さを感じました。今の私も依然として何の取り柄も無い無力な小娘です。あの時の母のような人々を助けられる力を持った人間に私はなりたいのです。ですから、あなたのお気持ちはとてもうれしいんですけど……」
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