物語と人形
「知り合いか?」
「随分前の話だ。」
エリーザにイザヴェルは答える。
「教会の聖女だったメルを連れ出した。追っ手に捕まって、罰が下されるべき俺を……こいつは助けた。」
そう説明するとイザヴェルは少女を見た。
「あの時は、聖女で俺は悪魔だ。だが、今は違う。貴様は只の少女だ。」
「でも……」
「怒ってない。俺は、貴様を怒ってはいない。」
「ほんとう?」
「嘘をついたことがあったか?」
少女はふるふると首を振った。
「イブ。」
イザヴェルの名を呼ぶ。
「メル。」
少女の名前が返ってきた。
「……あえて、うれしい。」
「再会の喜びなど、薄れるだろう。」
イザヴェルは冷たく言う。
「だって、これからずーっと、一緒に居れるんだからね!」
続けて、エリーザが言った。
「!!」
少女の表情が明るくなる。
「っていうか。あなた、ちゃんと名前あるじゃない。」
「だめ、だめなの。……イブが、くれたから。」
「イザヴェル以外呼ぶなって?……そういや、イザヴェルも、“イブ”って呼ぶなって言ったことがあった。」
“どういう関係?”というような表情で少女に詰め寄る。
「兄妹……が、近いな。」
「おにいちゃん?」
少女はこてんと首を傾げた。
「……そういうことだ。」
妙に納得した様子でイザヴェルが言う。
「ずるい!!」
エリーザは暫く駄々を捏ねたそうだ。
ハルデンは呆れ顔で本を読み始めた。

それから、静かだった屋敷は偶然出会った悪魔と天使により、賑やかになった。

無表情だった“人形”から、少しずつ表情が芽生え、きゃらきゃらと声を発てて笑うようになるのはもう少し未来のお話。

「……面倒よの。」

めでたしめでたし。
< 13 / 13 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:3

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

散華の麗人
月森菖/著

総文字数/249,764

歴史・時代920ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
ここは戦乱の世 強きものが勝ち、弱者は死に絶えるか、屈辱と共に生きるしかない。 過酷な世界 傭兵を職業とし、各国を転々としている少女“風麗”は細川国の国王の元に雇われることになって…… おちゃらけ国王とそれに振り回される傭兵の話 [御礼]9000PV超え、感謝致します。これからも見守ってください! <お知らせ>暫くの休止、お待たせしました。3章開幕です。     戦が終わり、彼らはどう歩むのか  その先に“希望”があるのか    交差する“想い”    容赦なく、時だけが流れる 【報告】20万文字超えしました。長くて疲れると思いますが、頑張って読んでみてください。楽しいはずです。 ※更新はかなり遅くなっております。
天使は唄う
月森菖/著

総文字数/18,624

ファンタジー20ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
「さぁ、いっておいで。」 神は魂を導く。 ――天空宮 そこは、神に仕えるもの達が世の均衡を守っている神聖な場所だ。 神の鏡により行き来できる世界。 そこへ天使は神の使いとして送られる。 彼女・彼らの神話にはない話 ※実際の宗教・神話には一切関係ありません。
死と憤怒
月森菖/著

総文字数/17,922

ファンタジー19ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
此処は人間と鬼が住む世界。 人間といっても“魔法使い”や“幽霊”などと種族は様々だ。 鬼もまた、様々で、“妖怪”や“鬼神”などといる。 細かく分かれていて、それがまた混在しているため、一昔前までの差別や偏見は皆無に等しい。 だが、鬼が人間を捕食したり、その逆もあったりと物騒な世の中ではある。 鬼の種族の中でも“吸血鬼”と呼ばれる種族がいる。 【「花と緋色」の同じ世界のお話】 【「大罪」の後のお話】

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop