キスから始まるセカンドラブ
2月14日、引っ越し当日、天気は晴天。いよいよ待ちに待った同棲生活。住み慣れた1Kの職場から近いアパートにサヨナラを告げた。数年住んでいただけあって少し寂しさはある。このキッチンも最初は狭くて使い勝手も悪く、調理場もほんの僅か。それでも工夫しながら使っていたことも今ではいい思い出。愛着すら湧いてきているくらい。

「ここも住めば都だったな」

空っぽの部屋の中を見渡して一礼をして部屋を後にした。家具や家電は私が使っていたものを持っていくから二人で買い揃えるものは少なかった。でも一つだけ私がどうしても拘ったものがあった。


「もう届いてるかな」

さっきまでの哀愁漂う気分も一転、ぬくぬくと思い出すあの日。それは私が智人さんとどうしても二人で選んで買い揃えたかったものを買いに行った日。何店ものインテリアショップを回り、悩みに悩んでようやく購入したダブルベッド。いつもよりも智人さんが優しくて嬉しかった。

私みたいに彼氏がいなかった女が誰かと眠るなんて全く今でも信じられない。付き合って一年にはなるけれどお泊りは疎か男女の関係にすらなっていない。何故なら彼も私がハツカノだったりする。でも彼と一緒に住むことが決まった日からきっとそんな関係になるのも時間の問題だし、誰かと眠るなんて子どものとき以来でドキドキしている。
< 2 / 164 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop