不実な夜の向こう側
「鈴鹿。やっぱり俺、送っていこうか?」

「何言ってるのよ、明日も休日出勤の人が。それに高津くんも、家反対方向でしょ」

「でも……」

「私は大丈夫だから。ありがとう」



きっぱりそう言って、笑顔をみせる。

高津はやはり釈然としない表情ながらも、その言葉に小さくうなずいた。



「わかった。……気をつけて」

「うん。──それじゃ、お疲れさまです」

「お疲れさま~」

「またなー」



自動でドアが閉まって、窓の外の同僚たちに軽く手を振る。

運転手に行き先を告げると、タクシーはネオンが輝く繁華街を、軽やかに走り出した。



「主任、寝ちゃダメですよ。すぐ着きますから」

「………」



こちらの話を聞いているのかいないのか、沖田は座席にもたれて黙ったままだ。

ふぅ、とまたひとつ、ため息を吐いて。

みちるは、過ぎ去っていく窓の外の景色に目を向けた。
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