Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩

強請るようにしがみ付く手に煽られて、白い胸元に口を寄せて―――

………ザンネンな事にそれ以上覚えてナイ。

深酒が過ぎた。


美久一色に塗りつぶされた脳内に、無粋に割り込む着信音。

先ほども幸せな夢から僕を覚醒させた音だ。

一度切れた着信音は間髪入れずに再び鳴りだした。

諦める気は無いらしい。

溜息を吐きながら通話ボタンを押せば、寝起きにはヘビーなテンションが耳元で弾けた。


『おうっ!休出しろよっ。』


…幸村さん。開口一番がそれですか。


「嫌ですよ。」


即答すれば電話口では「だよなー」と納得気味の独り事があって、聞いてもいないのに現在の状況が説明された。

この間の食玩に正式なオッケーサインが出たので残りのモデルも試作を提出して欲しい、との事。


『俺だって鬼じゃねぇから無理くり休出させよーなんざ思ってねぇよ。月曜日の十時の会議に持ってっから、それに間に合えばイイぞ。』


月曜日に定刻出勤して、十時までに一体どれだけ時間があると思ってるんだろうこの人。

米神を押さえる僕の姿が見えているみたいに幸村さんは「オマエなら出来っだろ~」なんてカラカラ笑っているけども。

何でもかんでも僕に任せりゃなんとかなると思ってませんか?

しかし不可能な事は不可能です。

渋々ながら休出を余儀なくされた。

…はぁ。

今日は美久の部屋を掃除して、美久の為に買い物して美味しい料理作って、迎えに行って美久の髪の毛梳かして、美容液でマッサージして…

全てを美久で埋め尽くした有意義な余暇を堪能するつもりでいたのに。ガッカリ。


< 102 / 333 >

この作品をシェア

pagetop