Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩

04☩幸せランド崩壊、構築☩


☩ ☩ ☩


「んあ?柏木、帰んのか?定時なんて珍しいじゃねぇか。」

「はい。お疲れ様でした。」


終業時刻、デザイン課へやってきた幸村さんに笑顔で挨拶を返して、チャイムと共にさっさとオフィスを出る。

だって今日、美久が早番で四時には終わるから、夕食作って待っててくれるんだもん。

いっそ早退したいくらいだけど社会人として一応自制したんだから、終業したら一目散に帰るよ。

当然でしょ。


「美久~……て、あれ?」


ウキウキと飛び跳ねるような勢いで美久の部屋に行ったものの、美久は不在。

仕事は少人数精鋭のサービス業だからトラブって時間延長かな。

木戸さんは今日は他県って言ってたから心配ないと思うけど。

…それなら仕方ない。

疲れて帰ってくる美久を労うために美味しい夕食を作って待っていてあげよう。

冷蔵庫の中を確認して美久がいつも絶賛してくれるロールキャベツを作る。

コトコトと煮込む段階になってもまだ帰って来ない美久にちょっと心配が過る。

どうしようかな…電話をかけてみようか。

それともいっそ迎えに出てみようか。

その時バタンと玄関の音がした。


「どうしたの?今日早番の割に帰ってくるの遅かったんだね。」

「ゆ、悠里…っ」


僕の声を遮るように上がった声。

焦りも露わな美久の表情に人知れず緊迫が奔る。


「何か…あったの?」


帰り道で痴漢に出くわした、とか?

…だとしたら即刻その痴漢を見付けだして二度と日の目も見れないようにしてやらなきゃ。


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