Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩

依頼されていたフィギアの試作工程ももうすぐ終わる。

フィギアはその後、量産ラインに入るため久寿軒さんとのやり取りが全く無くなるワケではないけども、僕との接点は殆ど無くなる。

このタイミングで関係をぎくしゃくさせたとしても問題はナイんだ。

…まぁ、須藤はちょっと気まずくなるかもだけどね。笑


「社内にいれば僕の噂の一つくらい耳にしてるんじゃないですか?僕には大切な人がいるんです。」

「で、でも……人の気持ちなんて移ろいやすいものじゃないかしら。」


瞬時に動揺を押し隠し、勤めて冷静に切り返してくる辺りが、さすがやり手の営業と言われているだけある。

しかも恋人、もしくは既婚であると聞いていてこのセリフとは、随分な自信じゃないですか。

しかしそんなセリフじゃ僕は揺るがせられませんヨ、久寿軒さん。


「あり得ませんね。僕が彼女以外に心を動かされるなんて、絶対にナイです。」


揺るがない自信と共に出た言葉に久寿軒さんはクッと唇を噛み締める。

チェックメイト。

話の決着は付いた物として、僕は残った料理を消化すべく悠然と手を動かしだした。


「…でも」


そう落ちた声に視線を上げる。

久寿軒さんは艶然と、どこか勝ち誇るみたいな笑顔を上げて言った。




―――ああ。さすがやり手。

< 120 / 333 >

この作品をシェア

pagetop