Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩



「柏木、飯作ってくれ。」

……………。

「ハイ?」

「だから、飯!昼、他の店舗寄ってて食いっぱぐれたんだよ。」


きょとんとする私に木戸さんがふっと笑う。


「柏木特製のオムライス。いつか食べさせてくれる約束もまだだったしな。」


それは過去、ほんの僅かな時間、恋人であった時に交わした約束。

私が悠里の手を取って、果たされる事もなくなった約束。

きゅっと詰まる胸を深呼吸で宥めて、私は大きく頷いた。


「……分かりました!腕によりを掛けてとびきり美味しい物を作らせていただきます!!」


一方的に木戸さんを傷つけた事がオムライス一つでチャラに出来るなんて思わないけど。

でもせめて、その約束くらい果たさなきゃ。




頑張って作った甲斐があって、木戸さんは何度も旨い!と言ってパクパクオムライスを食べてくれた。

とはいえ、手持無沙汰だったのか作っている最中に木戸さんが何度も覗きにくるから、手伝ってもらったりして。

後片付けも一緒にやった。

シンクで並んで作業するのはなんか新婚さんみたいで、不思議なカンジでもあり、くすぐったくもあり……。

そんなほんわかしただけの状況に混乱していただけの気持ちがほんの少し落ち着く。

それでもすっかり忘れ去るなんて出来るはずもなく…気付くと私の視線は窓の外へ向かってしまう。

悠里……まだ帰って来てない。

ひょっとして…、なんて思ってぎゅっと唇を噛む。




―――ひょっとして、

夕刻会った女の人と一緒にいるの?


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