Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩

美久と結婚して三カ月。

一緒に住み始めて三カ月。

それまでも住居は別であったものの、常に美久の部屋で時間を共有していたわけで特に変わらないと思っていた距離。

だけどいざ自分の手中に収めて世間的には手を出すのも許される関係まで近づいちゃったら…自制が思いの外キツイ。


「何だ。まだ手を出してないのか?」


驚いているらしい須藤に僕は応える代わりに焼酎のグラスを煽った。

触れたくない訳じゃ、ナイ。

支えてあげる、という理由にかこつけて手を繋いだ幼い頃からいつだって触れたくて堪らない。

欲望は留まる事を知らず、妄想の中でなら覚えてない程穢している。

だけど……

出来る訳ない。

そりゃ、これまで美久には散々酷い事をしてきた。

上手く行くはずの恋愛を潰したり、彼氏を奪ったり……何度も美久を泣かせたのは事実だ。

それでも美久が憎くて傷付けた事は誓って一度もないんだよ。

強引過ぎる程強引に手中に収めたけれども、美久にとって自分が弟でしかないのは分かってるから僕の勝手な欲望で美久を傷つけてしまわないようにしなきゃ…。

そう思うのに一緒にいればふとした拍子に箍が外れそうになって、最近はあからさまに仕事に逃げた。

安請け合いに仕事を受け付けて、家にまで持ち込んだりして。

それでも残業尽くしにしないのは、それでも一緒にいたいから。

触れたい。

近づきたい。

でも近づいて触れて、嫌われるなら、近づかないし触れない。

そうと決めていても無意識に近づいて触れてしまいそうになる自分を制御できそうになくて………

悪循環。

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