Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
はぁ、と須藤が溜息を吐いた。
「プライドもなく駄々捏ねて結婚までしておいて手を出さないとか…どんだけ腰抜けだ。」
……ふーん?
友達甲斐もなくそーいうこと言っちゃうんだ、君。
呆れた風の呟きにちょっとムッとした僕は素知らぬ顔で嘯く。
「“フィアンセ”にキスすら出来ない君に言われたくないね。百戦錬磨の遊び人の名が廃るんじゃない?」
ごほっと須藤が飲みかけていた焼酎に噎せた。
「なっ、おま―――」
「ん?何で知ってるかって?だって彼女とはメル友だからね。美久の監視と言う名目の付いたね。」
尤も、注意深い名取さんが自分の弱味になるようなあれこれを簡単にしゃべるわけじゃないけれど、そこはそれ。
僕だって策略家を自負しているワケで、上手い具合にカマを掛けて聞きだす。
須藤は「俺の事はいいからほっとけ!」と一気に飲み干した焼酎のグラスを手荒くカウンターに置いて、大将におかわりの声を掛ける。
あらら…
本気でプライドを逆撫でてしまったようで、クールガイはその面影もなく、仏頂面でそっぽを向いてしまった。
暫く互いに無言でグラスを傾けるだけの間。
………はぁ。
今日にしても美久との距離を保とうと須藤なんかを誘って帰宅を遅らせてるってのに。
改めてこの状況を見詰めれば虚しいというか、バカバカしいというか。
こんな仏頂面の横で飲んでるより、美久と一緒にいる方が何十倍も楽しいし幸せに決まってる。
そんな事を考えたら急激に美久に会いたくなってきた。
みくみくみくみくみくみくみ―――――
「オマエの女はオマエが思ってるほど弱くないぞ。」