Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
「何か鬼気迫る雰囲気で一心不乱に作ってっけど、……あんな仕事あったか~と思ってな。」
はぁ!?
アイツ仕事してないのか!?
幸村の密告に須藤は一目散に試作室ヘ急いだ。
「オマエ、一体仕事もしないで何作って―――――ぅ゛っ」
然し者須藤も悠里のデスクを見て怯んだ。
悠里のデスクは今や『美久パラダイス』
3Dスキャナで取りこんで出力する以上に精巧な…寧ろ生き人形並にリアルな1/10美久フィギアが増殖している。
須藤の困惑の視線を受けた久保塚ももはや何も言葉は無いとばかりに弱弱しく首を振る。
「えと…なぁ、柏木?…今日の仕事なんだがな……」
果敢にもそう声をかければ作業の手を止めないままに「ここにありますよ。」とサイドテーブルを示され、視線を向ければ確かにノルマである試作品の数々が並んでいる。
………仕事をしてくれる以上、一先ず何も言えない。
試作を手に途方に暮れる須藤の横に久保塚がそろりと近づく。
「……何か今日はいきなり仕事し始めて、あっという間に終わらせたかと思ったら、ずっとあんな調子なんですよ。」
そう呟く久保塚は幽霊にでも取り憑かれたみたいにたった一日でげっそりしている。
余程、訳の分からない悠里と一緒の部屋に詰め込まれているのがストレスになっているようだ。
気持ちは分かる。
もはや逃走する事は無いだろうとは思ったが、仕事場での態度が気掛かりだったため昨日も須藤が悠里を家に連れ帰った。
完全に追うのを諦めたらしい悠里は呪詛も呟かなくなったし、比較的大人しい態度だった。
しかし吐き出さない分、少しずつ何かを内包していくような感じがした。
それが人の第六感にでも障るのか、悠里が何をするワケでもないが一緒に居るだけで神経が疲辟する。
まさにバケモノ…。