Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩

黙々せっせと美久フィギアを作り続ける悠里に須藤が渋い顔で「まずいな…」とぼやく。


「アイツこれまではネーチャンの人形なんて作った事ないだろう?」

「ええ。そう言えば………。あの腕ならとんでもなくソックリな人形作って『いつでも一緒♪』とか言って持ち歩きそうなものですが…。」

「以前ヤツに聞いた事があるが……。アイツにとって意味を為すのは本物だけだから、らしい。」


人形は人形でイミテーションでしかない。

どれほど精巧に作ったとしても本物には成り変わらない。

偽物に本物を重ねて気持ちを注ぐのは所詮単なる偶像崇拝だ。と。

偶像崇拝したところで渇仰は癒せない。

心を満たすのはいつだって本物だけ。


「えと…それはつまり、砂漠で蜃気楼の湶をがぶ飲みしてみても現実にはちっとも乾きが癒えないって事ですか?……真理ですね。」

「ああ。アイツはそれが分かっていて今幻の水をがぶ飲みしてるんだ。その意味が分かるか?」

「………………相当の末期だとしか。」

「………俺もそう思う。」






☩ ☩ ☩


三日目。


ウチ(ASTRO)はいつから高性能アンドロイドに着手したのか?


会議室にいる上役はじめ、各部所要人物は密かに同じ事を思っていた。

ホワイトボードの前で試作を片手に滔々と説明を奏でるとても精巧なアンドロイド。


「この組み付け部分をこのような形に改良した事により、取り付けはスムーズになり外れにくくなります……………何かご質問でも?」


自分に集まる奇異な視線に気付いて悠里がそう質問すれば、一斉に視線が反らされた。

怖いっっ!!!

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