Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
建物からその外周、中々広いフォレストからその中に凛と佇む礼拝堂。
爽やかな木漏れ日を浴びながらフォレストの中をひたすら走った。
美久を探しながら、先ほどの男の事を考える。
だけど片平の記憶も蘇ってきたりはしない。
当然だ。
あんなヤツの事を思い出せるくらいなら真っ先に美久の事を思い出してるって。
美久は記憶なんかなくても大丈夫だと言ってくれるし、僕だって大事なのは“今”だし、この先だと思う。
だけどやっぱり思い出したいんだ。
時折、記憶断片と共に湧き上がる激情。
決して甘い感覚ばかりじゃないけれど、これほど心を揺さぶられる瞬間も無く。
きっと僕にとっては掛け替えのない宝物。
目の前にドアがあって、その先にそんな宝物が沢山詰まってると分かっていながら、そのドアを開ける事の出来ないジレンマ。
いや、でもそんな悠長な事言ってられない。
何としても記憶を取り戻して、美久を返して貰わなくっちゃいけないんだから。
汗が滴り落ちて、息が上がる。
その息遣いに小さく同じように乱れた息遣いが途切れ途切れに重なる。
これは幻聴?
走り過ぎてナチュラルハイになってんのか、僕は…。
でも今はそんな事気にしてる余裕ないんだから。
「っ………!」
いつの間にか靴紐が解けてしまっていたみたいで靴が片方すっぽ抜けた。
もうっ!
今はそんな物気にしてる余裕なんてナイんだってば―――
反射的に飛んだ靴を追った視線を前に戻そうとして、再び振り向いた。