Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
戻ってきたのはさっき出て来たばかりの百貨店。
勿論、仕事じゃないから従業員用入り口ではなく、一般のお客様用の入り口から。
目的地に向かって足早に歩いていた私は、進行方向にいた人物に気付き「あ。」と目を見開く。
その声で私に気付いた相手が、なによ!と言わんばかりに顎を突き上げた。
木戸さんに言い寄っていたアパレルの子…!
何と言っていいものか戸惑っていると、その態度が癪に障ったのか彼女がズカズカと近寄って来て私の前に立った。
「何なのよ。私に何か文句でもあンの!?」
「い、いえ…っ」
ひぇ~。
この子、木戸さんの前にいた時と態度違いすぎるよ~。コワイッ!!
「ふん。木戸さんと付き合う事になったらしいけど、それで私に勝ったとか思いあがらないでよね。」
「は、はいっ。」
勢いに気押されるように必死に頷けば、彼女は少し溜飲を下げたのか鼻を鳴らして髪の毛を払った。
「大体ね。木戸さんのコトなんて私、本気じゃなかったんだから。“落として欲しい”って頼まれて仕方なく言い寄ってただけだし。」
…え?
「だ、誰に?…頼まれたの?」
「はー?そんなの誰でもイイでしょ!それより。」
彼女がずいっと顔を近づけてくる。
「この間のイイ男、アンタの弟なんでしょ!?マジでカッコイイわ。紹介して!!」