Esperanto〜消える想い出〜
再会


辺りは既に、一面の暗闇だった。少女は周りをゆっくりと見ると、正面であろう方向を向く。


「・・・ふふ」


誰もいない闇に少女の声が響き、少女は更に大きく笑った。

「逃がさないよ、・・・薺」


笑い疲れたように少女は息を吐き、そして先程とは違い鋭い眼差しで闇を睨んだ。


「菘には、quoteなんかには絶対に渡さない。zephyrは私のものだよ」


Austinとしての《セット》であるzephyr、quote、junkは互いが互いに強い影響を及ぼしていた。


中でもquoteはzephyr(後の薺)から特に強い、異様なまでの影響を受けていたが、junkもまた影響を受けていた。


「菘は私が消えたと思ってるみたいだし、研究者達も私の実験は失敗だと思ったみたいだけど、それは違う」


そう、現に私は生きている。菘とは少し違うけれど、私もまたAustinからnatureに『成った』のだ。


zephyrがnatureに『成った』日、忽然と姿を消したjunk。情緒指数の低い彼女がそのような行動を取るのは珍しいという理由から、実験は『失敗』と確定した。


しかし、junkは独自にnatureとなる方法を模索し、遂にAustinの記憶を持ったままnatureになることが出来た。


「待ってて、zephyr(薺)。必ず救ってみせる」


少女は軽く息を吐くと光を求め歩き始めた。


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