【短編】友達彼氏
昇降口で真っ赤な傘を開く加藤の背中に、じゃあね、と投げた私の声は、見事雨音によって掻き消された。
降りしきる雨の中、あの赤い傘は、やっぱりよく目立つ。
その姿が見えなくなるまで視線で見送って、ふと、気がついた。
こんなふうに加藤と二人きりで話をしたのは初めてかもしれない、と。
でも思っていたより緊張感などはなく、まるで何も意識してないみたいに自然に話をすることができた。
それはもう、加藤のことが好きだということを忘れそうなほど、自然に・・・・・。
ザー・・・・・
それにしても、私はこんなところで、何のために雨がやむのを待ってるんだろう。
傘を手放した今、もう待っているしかないんだけど。
本当は、もっと違う理由。
たとえば・・・
「あいつのこと待ってんの」
加藤の言葉が蘇る。
はっきりと否定できない自分が恐ろしい。
だって、もう私たちは、違う。
・・・・ああ、そっか、私
牧瀬にフラれたってことになるのか。