【短編】友達彼氏
視線は、牧瀬の手首を掴む自分の手に向いたまま。
今、顔を見るのはさすがに恥ずかしい。
きっと牧瀬も、それは同じだろう。
お互い、自分たちの震える手元を見下ろして、恥ずかしさに顔を赤くしている。
不意に、すっと牧瀬の傘を持っていない方の手が伸びてきた。
やめろ、と引き剥がされるのだろうか。
そんな覚悟をしていたのも束の間。
牧瀬は、その大きな手で、私の手を包んだ。
そのままぎゅっと握って、親指で私の手のラインをなぞって、ちっちゃい手、と呟く。
どくん
どくん
どくん
「・・・やべぇ、急に、緊張してきた」
「私も」
「ほんと?」
ばちん、と視線がぶつかる。
牧瀬は咄嗟にまた手の甲で顔を隠して、私たちの手は、離れてしまった。