もう、明日がないなら…

「何故…」

　背中からしっかりと抱きしめる雅臣の腕の中で、美妃震えた呟きが散った。

『ピンクのバラの効果って知ってるかい？　弱った身体にエネルギーを与えるんだそうだよ。』

　その言葉で雄哉という男のことを初めて知った。

『ピンクのバラのもう一つの意味を知っているかな。"ひと時の感動"。つまり、僕は君を見つけた時に、この出会いに感謝したのさ』

　その言葉で、彼の優しさを知った。

「結局、復讐というのはうまくできないものなのね…」

　小型の拳銃を足首のホルスターにしまいながら佳美がぽつりとそう口にした。

「あぁ、そうだな…」

　最悪なラストを迎えた彼らは、何とも後味の悪い事件に幕を閉じる事となったのだった。