もう、明日がないなら…
「とにかく降ろしてください!! 私は狙われる覚えはないし、雄哉さんに連絡しなきゃ!」

 美妃はそう叫びながら、車のドアロックを解除しドアを無理矢理開けようとした。しかし、そんな彼女の行動に動揺することなく、車のスピードは落ちることはなかった。

「空っぽの今のあなた自身に覚えがなくても、記憶をなくす前のあなたに用事があるのかもね。あなた、記憶を取り戻したいんでしょ? なら、多少の危険をおかしてでも、あたし達といた方がその価値はあるんじゃない?」

 佳美のその言葉に、美妃の瞳は大きく開いた。そして車のドアロックから手を離した。

(確かに、そうかも知れない…)

 そう考えた美妃は、シートに身を預け流れる景色を見つめていた。
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