もう、明日がないなら…
 意識が途切れ、膝の力が抜けて床に倒れこみそうになった瞬間、力強い腕が彼女を支え、優しくベッドに寝かせてくれた。

「あなたは…、誰?」

 薄らいでゆく意識の中で、彼女はつぶやくようにその腕の持ち主に尋ねた。

「今はゆっくりとお休み、お姫様」

 大きな手で、彼は彼女の頭を優しく触れ、穏やかに微笑んでそう答えると、彼女は眠るように目を閉じたのだ。

 男は彼女が眠ったのを確かめると、鋭く目を細めた。

「やっと見つけた…」

 そう口にすると、にわかに口角を上げたのだ。そして静かに部屋から去って行った。

< 4 / 128 >

この作品をシェア

pagetop