今日は何する?
デートしよう。


例えば深夜に恋人に会いたくなって、携帯片手に連絡するか30分悩む。
そんな経験があると思います。
無い方は、多分ですが、連絡してしまうか、会いたくなったことが無いのどちらかだと思います。


明日はカケルとデートです。

「映画でも一緒に行かない?」

なんて、嬉しい誘いがあったので深夜から会いたくてたまりません。
震えませんが、悶えています。
デートなんて何回もしているのに、毎回前の日から緊張してしまいます。

なので、だいたい……


「おはよう、アヤネ」

「うん」

「今日さ、」

「うん」

「あそ」

「うん」

「こ」

「うん」

「……どうした?」

「うん?」

眠たくてしかたありませんっ!!
昨日聞きたかった声が、隣で聞けているのに……眠いっ!!
会いたくて、会いたくて、悶えてたのに眠い。

そろそろデートに慣れなければなりません。



「何見る?」

映画館に到着。
眠気は歩いているうちにどこへやら……。
上映中の映画に目を通してみても、特に気になる映画が上映していないことに気づくアヤネ。

「カケルが選んで」

こんな時は、全て任せてしまうのが得策。
どーでもいいが、悩んでる横顔を見るのが案外好きだったりするアヤネ。
理由は、何かカッコイイから。

「これは?」

そう言って指さした映画はSFアクション。
はっきり言って何でも大丈夫なので、笑顔でお返事。

「いいね!」

映画が決まり、お次はポップコーン売り場へ。
いつものキャラメルLサイズを買うべく列に並ぶ。

「カケル、今日ってなんかあるの?」

「いつもより混んでるよね」

周りにはカップルばかりがいる。
しかも、いちゃいちゃラブラブしている。

(あ、あの人恋人繋ぎしてる)

ぱっと自分の手を見ると、恋人繋ぎじゃないことに気がついたアヤネ。

(……)

ちょっと寂しい。
後で恋人繋ぎ頼もう。なんて考えてみたりする。

「飲み物は?」

「同じの」

「俺、ホットコーヒーだよ?」

「……。ココアで」

飲み物を待っている間は、くだらなことで盛り上がる。

「最近ね、学校に行って先生に会って来たんだ」

「奥田先生元気だった?」

「元気だったよ。ちょっと太ってたけど」

同じ高校を卒業していて、しかも三年生の時の担任が同じ。
しかも、野球部と野球部のマネージャーだった。
そんな二人なので、たまに高校話で盛り上がります。

「お待たせいたしました。ホットコーヒー、キャラメルLとココアです」

ポップコーンと飲み物を受け取って、席に向かう。

――――――
―――

「………」

「………」

面白くも無く、つまらなくも無く、なんだか微妙な映画だった。
なので二人の空気もかなり微妙である。
映画の盛り上がりシーンで会話が弾むことが無いので、はっきり言って気まずい。

(……あ!)

何故かこのタイミングで恋人繋ぎのことを思い出したアヤネ。
思い立ったら行動したいアヤネは、カケルをみつめた。

(……)

……なんとも微妙な顔をしている。
まぁ、そんなことアヤネはお構いなしなので、カケルの進行方向へ走っていくと、

「手」

目の前に立って手をさしのばす。
微妙だった顔が、ちょっと笑顔になる。
早歩きで駆け寄ると、

「今度は、ちゃんと調べてから行こうな」

そう言ってアヤネの手を、恋人繋ぎで握った。

「……うん!!」

それが嬉しくて、映画のことなんか忘れたように満面の笑みで返事をした。






―――――映画がつまらなくても、恋人繋ぎで幸せになれる彼女が大好き。

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