今日は何する?
カレー作ろう。

例えば自分の彼氏が容姿端麗でスポーツ万能だったとしたら……。
自慢だけど、女子に人気でいろいろ大変な思いをするだろう。

例えばそんな彼氏が、料理や裁縫、家事全般が出来なかったら……。
そりゃもちろん、自分がなんでもやってあげるだろう。
家事全般が得意な人なら。

勉学に特に励むこともなく生きてきた、18歳女子。
料理、裁縫、家事全般が大好きな、18歳女子。


そんな私は、今日初めて彼氏に手料理を振舞う。


何を作ったらいいのか分からないので、好きな食べ物を聞いてみた。

「食べ物は何が好き?」
「カレーかな。野球部時代を思い出すんだ」
「……カレーね」

そしたら、カレーだというので作ってみた。
野球部時代によく作っていたカレーの味と瓜二つ。
一応、マネージャーだったから。

ちなみに、まだ付き合って一年目。
しかも自分の部屋に男の子を入れるのは初めてです。

(香水臭くないかな?)

気合を入れすぎて、先ほど消臭剤を大量にぶちまけてしまいました。

(……臭い。こんな場所でカレー食べたら気持ち悪くなるな)

重たい足を持ち上げて窓に向かうと、外が真っ白になっていた。

(おーーー!雪だ!)

テンションが上ったアヤネは窓を一気に全開にする。
体に冬の冷たい風が当り、みるみるうちにアヤネの体温が奪われていく。
でも、そんなこと気にしないアヤネは目を輝かせながら雪を見た。

-――-~ピンポーン

すると、家のチャイムが鳴った。
同時に心臓がドキリとする。
雪への感動など忘れ、強張った顔をして手を胸に当てる。

(普通に、普通に……いつもどうりに)

冷たい風に当りながら呼吸を整えると、玄関に向かう。
すると、足音で分かったのか、ドアの向こう側から声が聞こえた。

「アヤネー、俺だけど」

その声は寒さからなのか、少し震えているのが分かった。

「今あけるから!」

カケルの声に、少しだけ体温が上昇したのが分かる。
それでも冷たい手でドアノブをひねると、そこには待ち望んだ人。

「いらっしゃい!」

顔が見えた瞬間にそういっていた。
そんな自分を見たカケルは、微笑みながらこう言った。

「おじゃまします」

カケルが部屋に入ってきて、最初に発した言葉はこうだった。

「……さっむ!!」

よく見れば、窓が全開のままだった。
しまったとばかりに急いで窓をしめる。

「ごめんごめん。雪、見てたから」
「雪?昨日も降ってたのに」
「昨日は見れなかったの!」
「……へぇ」

ちょっと顔を赤くした彼女が、愛しくなる瞬間がある。
いつもと違った様子から伺えるのは、彼女が緊張しているということ。

「大丈夫だって、捕って食べたりしないよ」

それがなんだか可愛くて、ちょっといじめたくなるのだ。

「なっ?!なに言ってんのー!」

真っ赤なお顔がカワイイこと。
ふと台所を見ると、そこにはカレーが盛られていた。

「カレー、作ってくれたんだ」
「好きだって言ってたから」
「ありがとう」
「……うん」




――――照れて下を向く、キミが好き。



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