こんな能力なんていらなかった—鳥籠の中の鳥は愛を詩う—




《どーしたの?》



 お父さんの使い魔となったエアリエルが、フィリアムの肩に止まる。


《泣いてるの?》


 エアリエルに言われて初めて気付く。

 自分は確かに泣いていた。


《なんで泣いてるの?》


 なんでか?そんなの分かんない。


 心細いから?

 痛いから?

 怖かったから?


 そのどれかでもないし、そのどれでもある気がする。


 でも、本当は——



『ふざけるなよ』



 お父さんが家に入る前。

 確かに聞こえたその言葉に。


 失望の色が混ざっていたから。



「……おとーさんに……っ」

《セルファがどうしたの?》

「絶対っ嫌われた……あきれられたっ……ひくっ」


 幼子のような泣き声を上げるフィリアムの口をエアリエルは塞ぐ。


《ここでは泣いちゃダメよ?村から追い出されちゃうわ》


 それでもフィリアムは泣き止まない。
 確かにフィリアムは賢いし、大人びている。
 だが、それは、五歳にしてはという意味だ。

 フィリアムはまだまだ五歳の子供なのだ。



 口を大きく開けてみっともなく泣く横で、エアリエルはずっと、ずっとずっと、フィリアムのそばに寄り添っていた。


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