花結び
∞序章∞
みんな。

居なくなった。


見慣れた町をビルから見下ろす光を失った七緒の瞳。


一月前に起きた、交通事故。


七緒を一人家に残し、家族が買い物に出掛けた先の事故だった。


原因はトラックの居眠り運転。
運転手が軽傷で済んだのに対して、七緒が失った物は大きすぎた。


家族が居ない。

その現実を受け止めるのは、七緒には無理だった。


周りの同情の目。

孤独となった七緒の気持ちも考えずに押し掛けるマスコミも。

全てが苦痛だった。


父さん、母さん、美緒……。


今、会いに行くから。



踏み出した先には足場は無い。

落ちていく身体に身を任せ、ゆっくりと目を閉じた。


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