砂漠の夜の幻想奇談

驚愕だった。


(まさか…私に、犬のようにかぶりつけと…!?)


手が使えないのだから、かぶりつくしかない。

床ではなく、テーブルに置いてくれただけ有り難いものであるが、サフィーアはそこまで考えが回らなかった。

ただ、静かにパン菓子を見つめる。


「おい、食えよな!それから、いい加減にぶすくれた顔やめねぇか。でないと顔がまずくなって値打ちがなくなるだろ!」

なら、もっとぶすくれてやる。

どうせ逃げられないのなら、高く売られてこの男を喜ばせるなんて真っ平ゴメンだ。

そうサフィーアは思った。


「いいか。俺が戻るまでに食え。それと顔!……わかったな?」


それだけ言うと、男は部屋から出ていった。

外側からガチャリとカギのかかった音が聞こえた。


(閉じ込められた…)


サフィーアは為すすべなく俯いた。




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