砂漠の夜の幻想奇談


 さて、男は街に出ると、急いで奴隷市場に集まる奴隷商人に会いに行った。

彼は商人達の間を、サフィーアの美しさについて語って歩いた。

「黒髪に真っ白な肌!ごく若い娘だよ~!少し痩せてるが、な~に。たんと食わせりゃ、すぐふっくらしたいい身体になること間違いなし!」

すると、一人の歳老いた商人が近寄ってきた。

「その女奴隷は処女かね?」

「ああ、アッラーにかけて。あの娘は処女だ。確認はしてないが、俺くらいになると男に対する反応でわかるからよ」

「どこにいるんだ?会ってみたいのだが」

「なんだ。やけにこだわるじゃねぇか」

探るような目つきをする男に、商人は声を潜めて言った。

「ここだけの話、わしはその女奴隷を買った後、オマル・アル・ネマーン王のもとに向かわせるつもりなのだ」


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