砂漠の夜の幻想奇談
もうすぐで正午という、お昼時のことだった。
この日も通常通り公務にとりかかっていたシャールカーンは、バルマキーから報告を受けていた。
「午前中、市内を巡回していた警吏が路地で死体を発見しました。死因は目や喉を切り裂かれたことによる出血多量。死者は男性で、どうやらベドウィン人のようです」
「殺人か…」
「のようですね」
「目撃者は?」
「今のところ、おりません」
「そうか。実に面倒だね。犯人は見つけ次第、逮捕して死刑とするよ」
適切な判決を下したシャールカーンだったが、この発言に対しバルマキーが興味深い事実を述べた。
「王子。実はこの男、近頃ダマスに出没するようになった盗賊の頭目かもしれません」
「何?」
「お尋ね者の頭目と死者の人相が非常に似ているので、恐らく…」
「なら…死んで当然の奴が殺された、というわけか」