砂漠の夜の幻想奇談

弱々しくシャールカーンが呼ぶ。

「なんだ?黙ってないと傷に響くぞ」

「全身…黒ずくめっ……背は、あまり高くない。……まだ、近くにいるはずだっ」

先程見掛けた怪しい人物。

「捜、せ…!!」

「やはりまだネズミがいたのか。わかった。敵の捜索は任せろ」

「トルカシュも、つかえ…」

「ああ、叩き起こす。姫はドニヤと一緒にいて下さい。いいですね」

それだけ言うとカシェルダは風の如く駆け出した。


それから、きつく瞼を閉じたシャールカーン。

医者が到着するまで、口を開くことはなかった。







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