砂漠の夜の幻想奇談

「カシェルダ、俺もサフィーアの婚約者に立候補するよ。正式にね」

「はあ?」

長椅子で踏ん反り返っているシャールカーンを睨みつけるカシェルダ。


(シャール!?)


まさかの立候補宣言にサフィーアは口をあんぐり開けた。

「サフィーアも俺とならいいって言ってるし、立候補すれば問題ないだろう?」

「貴様……本気か?」

「ああ。使者としてバルマキーを派遣しよう。カシェルダ、共に行って取り次ぎを頼むよ」

「マジか……」


頭を抱える護衛官の服を姫はクイクイ引っ張った。


(カシェルダ!私からもお願い!リストの候補者と結婚するくらいならシャールと一緒になるって父上に伝えて!)


そう書いた紙を見せればカシェルダの覚悟も決まったようで。

「……わかりました。コンスタンチノープルへ参ります」

しぶしぶ了承。

「では早速書簡をしたためよう。バルマキーを呼んでくれ」


こうしてカシェルダとバルマキーのコンスタンチノープル行きが決定した。

どうしても海路で行きたいというバルマキーの意向を汲み、彼らは船で地中海を進んだ。







< 316 / 979 >

この作品をシェア

pagetop