砂漠の夜の幻想奇談
第十一話:平安の都バグダード


 さて、カシェルダ達がダマスを離れて数日経ったある日。

平穏な太守の屋敷にバグダードの王宮から書簡が届いた。

有能な部下が一人減ったことで真面目に執務を行っていたシャールカーンは、届けに来た使者を執務室に通し、書簡を受け取る。

「なんだ?父上から?」

手紙の内容は、およそこんなものだった。


――我が愛しい息子シャールカーンよ。そちにようやっと寵姫ができたとのこと。まことなれば本当に喜ばしい!そこで一つバグダードへ遊びに来て、その娘を私に紹介してはくれまいか?聞けばかなりの美人らしいではないか!よろしく頼むぞ



「……スケベ親父め」

シャールカーンは書簡をグシャッと握り潰した。

こんな手紙が来てしまったら行かないわけにはいかない。

溜息をつき、額を押さえる。


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