砂漠の夜の幻想奇談


 書簡の内容をサフィーアに伝え、旅仕度をさせる。

用意が整い次第出発としたら、食料の準備やなんだかんだで気づけば三日経っていた。


出発の朝。

ラクダの背に乗ったサフィーアは珍しくベールで顔を覆っていた。

深い青色のそれを頭から被り、髪や顔を隠す。

イスラム教の女性にとっては宗教的な意味があるが、サフィーアは単に日よけとして装着した。

愛馬ジェドラーンに跨がるシャールカーンは白いターバンを頭に巻いている。


「これより平安の都バグダードへ出発する!行くぞ!ハッ!」

シャールカーンの高らかな声が太守の屋敷の門前に響いた。

主人の合図でジェドラーンが通りを歩き出す。

ドニヤやトルカシュはもちろん、その他大勢の侍女、護衛官をともなってバグダードへの旅が始まった。





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