砂漠の夜の幻想奇談


(嫌よ!今忙しいの!)


頬を膨らませてからプイッと横を向く。

それだけでシャールカーンには伝わったようだ。

「サフィーア、少しくらい良いじゃないか」

粘るシャールカーン。

これには一応訳がある。

政務所は王様が大臣や貴族を集めて仕事をする場。

バグダードの貴族達にサフィーアの存在を見せつけて自分への縁談数を減らそうという魂胆なのだ。

なんせ、昨夜の宴が終わる頃、自分の娘を売り込む貴族達に囲まれて大迷惑したから。

その時、薄情なことにサフィーアは一足先にドニヤと共に部屋へ戻ってしまっていた。

しかも、やっとのことで広間から戻れば、すでにサフィーアは就寝。

ろくに話しもできず、翌朝はこの調子だ。

いい加減、シャールカーンの笑顔も崩れる頃だろう。


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