砂漠の夜の幻想奇談
(残るはあの男だけか)
瞬く間に逃げていく褐色の肌の男を追いかけ、砂漠を駆ける。
(後少し…!)
みるみる距離が縮まり、刃が届くまでもう一歩という時だった。
「ガーガー!ガーガー!!」
突如聞こえた、怒ったような鳥の鳴き声。
そして…。
「うわあっ!!どけ!どけってんだ!」
目の前の賊が悲鳴を上げた。
「ガーガー!!」
「ガー!ガー!!」
(なんだ…?)
前方をよく見ると、なんとガチョウの群れがラクダに体当たりをしていた。
「ガチョウ!?なぜこんな砂漠の真ん中に…?」
一瞬ガチョウに思考を奪われたが、シャールカーンはすぐに我に反った。
(今なら!)
ガチョウの足止めを利用して、彼は男の背中を切り裂いた。