砂漠の夜の幻想奇談
少々大袈裟に胸の内を告げるカシェルダ。
それを聞き流しながらシャールカーンは見当たらない重臣を目で探した。
「カシェルダ、バルマキーはどうしたんだい?」
一緒に行動していたはずのバルマキーがいない。
シャールカーンは胸騒ぎを覚えた。
「そのことについて、話がある」
カシェルダが真剣な眼差しをシャールカーンに向ける。
「バルマキーはここにはいない。コンスタンチノープルの城にいる」
「城に?まだ帰って来てないと?」
「そう。しかも城と言っても、正確には城の地下牢の中だ」
「地下牢!?」
これにはその場で聞いていた全員が驚きの声を上げた。
サフィーアに関しては息を呑み、何とか声を押し殺す。
「捕われた、ということか…」
「人質だ。アフリドニオス王はサフィーア姫を帰さなければ彼の首を斬るとおっしゃっていた」