砂漠の夜の幻想奇談

そこにいたのは、まさしくシャールカーンだった。

彼は半裸で寝台に身体を預け、安らかに眠っている。

しかし寝台からすぐ手が届く距離には、愛用の三日月刀が置かれていた。

彼にとって、穏やかな眠りの一時でさえも真の安息の時間とは言い難いようだ。


「ん…」

無防備に寝返りをうつ彼。

今夜の客人には殺意がないためか、飛び起きる様子はない。

マイムーナはもっとよく見ようと魔神の姿に戻り、シャールカーンの傍まで近寄った。


「美しい…」

彼女は恍惚とした表情でシャールカーンを賛美した。

「この全身から発する魅力…頬の赤みといい、肌の白さといい……嗚呼!我を酔わせるような香気!輝く金の髪!ほのかに陰をつくるこの長いまつげ…!」


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