砂漠の夜の幻想奇談

目の前の青年ほど美しい男子を今までに見たことがあっただろうか。

「我が所有するあの十二人の王子達よりも美しいとは…。何と言う奇跡!」

感極まった彼女は喜びに我を忘れ、高らかに笑いながら部屋の窓から空へと飛び出した。

そのまま飛翔し、闇夜を踊り回る。


「素晴らしい!!気に入った…気に入ったぞ!もはやあの者の美は至高の存在!彼をつくりたもうたアッラーに祝福あれ!」

清んだ夜空の静寂を破る歓喜の叫びを上げていると、唐突に聞き覚えのある低い声がマイムーナの耳に入ってきた。


「何をそんなに興奮しているんだ?マイムーナ」


忽然と姿を現した黒髪の男性魔神。

「むっ…ダハナシュか。我の喜びの邪魔をするでない。去れ!」

ダハナシュと呼ばれた魔神は洗練された微笑みを浮かべ、一言。


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