砂漠の夜の幻想奇談

「ならば良い。では、シャールカーンに問おう。お前、王になる気はあるか?」


改めて問われたシャールカーンの脳裏を過ぎるのは、護るべき多くの民、自分を慕ってくれる兵士達、そして――。


(大切な人達を護るため。人々の期待に応えるため……俺は…)


心で誓い、その場に跪く。

恐れずに真っ直ぐ見上げるは、フェトナー様の瞳。


「はいっ!ございます!」


政務所にいた時とは打って変わったシャールカーンの態度を目にして、サフィーアやカンマカーン、その他の臣下達は顔に喜びを浮かべた。


「ふむ。良い返事だ。ならば…!」

フェトナー様は整列する大勢の兵士達に向かって宣言した。


「ここに第二王子の王位継承権を回復する!そして、我らの新たな主君としてシャールカーン・イブン・オマル・アル・ネマーンをバグダードの王にいただく!!」



大地が揺れる。

王宮にて、咆哮のような兵士達の歓声が轟いだ。








< 608 / 979 >

この作品をシェア

pagetop