砂漠の夜の幻想奇談
無理矢理にバグダードから連れ出され、ルームザーンと二人。
サフィーアはいくつかの町を移動しながら確実にアナトリアへ近づいていた。
今は小さな町の宿屋(カーン)に泊まり、明日のための体力回復に努めている。
(疲れた……)
寝台にグッタリと横たわる。
ルームザーンは慣れているようだが、サフィーアにとって、ずっと馬上にいるのはかなり体力を消耗する。
しかも今は妊娠中だ。
普段のコンディションではないため、さらに疲れが押し寄せる。
「体調は大丈夫かい?水を持って来たよ」
飲み水の調達へ出ていたルームザーンが部屋に戻ってきた。
ゆっくり起き上がろうとするも、身体が怠くて上手く上体を起こせずにいると、見兼ねたルームザーンが寝台に近寄ってきた。