砂漠の夜の幻想奇談

「た、太守様…今のは…?」

ドニヤが恐る恐る問い掛ける。

マイムーナの囁きにゾクリとしていたシャールカーンは我に返った。

「ああ……すまない。今のは……気にするな。それよりこれから…お前達に迷惑をかけることになる」

「何でしょう」

硬直状態が解けたバルマキーも会話に加わった。

信頼のおける一同をグルリと見回して、シャールカーンは徐に告げる。


「サフィーアがいなくなった」


ゆっくり目を閉じて、更に言う。


「俺も…いなくなる」


告白してから真っ先に反応したのはトルカシュだった。

「い、意味わかりませんよ!ご冗談ですよね!?」

「悪いが、冗談じゃない」

「どういうことですか!?サフィーア様がいなくなったとは…!」

女主人の姿を探して部屋を見回すドニヤに、シャールカーンは何も言わずシャムスを抱かせた。

「ドニヤ、シャムスを頼む。俺達に代わって…育ててやってくれ」

「た、太守様…!?」


< 955 / 979 >

この作品をシェア

pagetop