砂漠の夜の幻想奇談
「た、太守様…今のは…?」
ドニヤが恐る恐る問い掛ける。
マイムーナの囁きにゾクリとしていたシャールカーンは我に返った。
「ああ……すまない。今のは……気にするな。それよりこれから…お前達に迷惑をかけることになる」
「何でしょう」
硬直状態が解けたバルマキーも会話に加わった。
信頼のおける一同をグルリと見回して、シャールカーンは徐に告げる。
「サフィーアがいなくなった」
ゆっくり目を閉じて、更に言う。
「俺も…いなくなる」
告白してから真っ先に反応したのはトルカシュだった。
「い、意味わかりませんよ!ご冗談ですよね!?」
「悪いが、冗談じゃない」
「どういうことですか!?サフィーア様がいなくなったとは…!」
女主人の姿を探して部屋を見回すドニヤに、シャールカーンは何も言わずシャムスを抱かせた。
「ドニヤ、シャムスを頼む。俺達に代わって…育ててやってくれ」
「た、太守様…!?」